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個人事業主の営業権の売却損益は何所得か?
大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。
個人事業主が、後継ぎがいないため事業を譲渡する場合があります。
この事業譲渡の対価の中に含まれるものが超過収益力としての営業権ですが、具体的には顧客リストやノウハウ、ブランドなどです。
事業譲受する側は、会計上のれんとして処理します。
事業譲渡する側が法人の場合、事業譲渡をして譲渡損益が発生しても特に課税所得計算上、区分計算は不要(当然、購入側は必要です。)ですが、個人の場合は資産の種類により所得計算が異なりますので区分計算が必要な点、留意が必要です。
■営業権以外の資産を売却する場合
個人事業主が他の個人に店舗等や従業員を引き継ぎ、一括で営業権も含めて事業譲渡する場合でも契約上内訳を明確にしておく必要があります。
資産や負債の各評価額が公正な時価になっていることを示す根拠資料を残しておかないと後日税務当局とトラブルになる可能性があります。
各資産項目の評価に入繰りがあると所得金額や所得税額に変動を生じるためです。
具体的には下記の通りです
①及び②の資産を売却する場合は分離課税の譲渡所得となり、損失が発生しても原則として他の所得とは通算できません。
③の資産を売却する場合は総合課税の譲渡所得となり、損失が発生すれば他の所得と通算が可能です。
④及び⑤の資産を売却する場合は事業所得になり、損失が発生すれば他の所得と通算が可能です。
但し、④の資産のうち業務の性質上基本的に重要な資産を売却する場合は③と同様の総合所得の譲渡所得となります。
■営業権を売却する場合
事業譲渡する場合、引き継ぐ各資産や負債の時価を個別に確定し事業譲渡の対価が総資産額と総負債額の差額を上回る部分の金額があれば営業権となります。
それでは、営業権を売却した場合、その売却損益は所得税の申告上何所得となるでしょうか。
答えは総合課税の譲渡所得です。
営業権は所得税法上減価償却資産とされ、譲渡所得の起因となる資産の譲渡(所得税法第33条第1項)になるからです。
■総合課税の譲渡所得
総合課税の譲渡所得の計算は下記の通りです。
尚、取得費は外部から購入した営業権であれば経過期間に応じ5年月割均等償却後の簿価ですが、自己創設のれんの場合の取得費はゼロとなります。
営業権の取得費が不明の場合、土地、建物、有価証券のように概算で売価の5%を取得費とすることはできませんので留意が必要です(所得税基本通達38-16)。この場合の取得費はゼロとなります。
特別控除は特別控除前所得が50万円以下の場合特別控除前所得と同額とし、50万円超の場合は50万円とします。
短期とは購入後5年以内の売却の場合で、長期とは購入後5年超経過後売却の場合です。
土地や建物のように譲渡年の1月1日で判定するのではなく、通常の所有期間で判定します。
通常、長期間経過して事業譲渡するケースが多いと思われますので、営業権の売却損益は長期譲渡所得になり、所得計算上特別控除や半額計算する分、他の所得より有利になります。
そのため他の項目との入繰りがないか問題となることが多いと思われます。
■従業員を引き継がない場合
技術、ノウハウ、製造方法やサービス運営方法などを相手に開示して、屋号やブランド、固有の商品名やサービス名を引き継げば、たとえ従業員を引き継がなくても営業権の譲渡所得処理は認められると思います。
たとえそれがのれん以外のその他の無形固定資産として判定されても総合課税の譲渡所得の範疇に納まるからです。
但し、どこにでも売っている汎用の商品やサービスとともに事業を譲渡するが、従業員(人材)を引き継がない場合は通常は技術、製造、営業などのノウハウは引き継がれないと思われますので営業権の譲渡にはあたらないものとして否認される可能性はあると思われます。
■税理士業務などの一身専属権
税理士が廃業にあたり、従業員を引き継がず他の税理士や税理士法人に顧客を引き継ぎ営業権の売却損益(総合課税の長期譲渡所得)として処理したが、顧客の紹介料やあっせん収入として事業所得扱いされた裁決事例や判決事例もありますので留意が必要です。
税理士業務は一身専属性が高い業務であり、顧客とは委任契約の上に成り立ち、個人的信頼関係に基礎を置くもので他の税理士に譲渡できる性質のものではないとして否認されています。すなわち、譲渡所得の起因となる資産性はないとされたのです。
また、現在の国税庁HPには下記の通り古い個別通達が載せられており、雑所得扱いされる可能性も高いと思われますが、個人的には腑に落ちません。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/670727/01.htm
尚、税理士が死亡後、税理士でない遺族を通じて事業を他の税理士に売却する場合は雑所得になる可能性があると思われます。
■購入者側の処理も影響
営業権を購入した者が必要経費処理している場合、売却した側は営業権の譲渡とは認められない可能性が高くなると思われます。
現在では、所得税法上営業権は任意償却できなくなっているため、購入者はうっかりミスを除き営業権であれば営業権に計上して償却するはずであるからです。
購入者が必要経費処理したということは紹介手数料を支払ったと考えている証拠となる可能性が高いと思います。
21/06/01
21/04/21
大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。
個人事業主が、後継ぎがいないため事業を譲渡する場合があります。
この事業譲渡の対価の中に含まれるものが超過収益力としての営業権ですが、具体的には顧客リストやノウハウ、ブランドなどです。
事業譲受する側は、会計上のれんとして処理します。
事業譲渡する側が法人の場合、事業譲渡をして譲渡損益が発生しても特に課税所得計算上、区分計算は不要(当然、購入側は必要です。)ですが、個人の場合は資産の種類により所得計算が異なりますので区分計算が必要な点、留意が必要です。
■営業権以外の資産を売却する場合
個人事業主が他の個人に店舗等や従業員を引き継ぎ、一括で営業権も含めて事業譲渡する場合でも契約上内訳を明確にしておく必要があります。
資産や負債の各評価額が公正な時価になっていることを示す根拠資料を残しておかないと後日税務当局とトラブルになる可能性があります。
各資産項目の評価に入繰りがあると所得金額や所得税額に変動を生じるためです。
具体的には下記の通りです
①及び②の資産を売却する場合は分離課税の譲渡所得となり、損失が発生しても原則として他の所得とは通算できません。
③の資産を売却する場合は総合課税の譲渡所得となり、損失が発生すれば他の所得と通算が可能です。
④及び⑤の資産を売却する場合は事業所得になり、損失が発生すれば他の所得と通算が可能です。
但し、④の資産のうち業務の性質上基本的に重要な資産を売却する場合は③と同様の総合所得の譲渡所得となります。
■営業権を売却する場合
事業譲渡する場合、引き継ぐ各資産や負債の時価を個別に確定し事業譲渡の対価が総資産額と総負債額の差額を上回る部分の金額があれば営業権となります。
それでは、営業権を売却した場合、その売却損益は所得税の申告上何所得となるでしょうか。
答えは総合課税の譲渡所得です。
営業権は所得税法上減価償却資産とされ、譲渡所得の起因となる資産の譲渡(所得税法第33条第1項)になるからです。
■総合課税の譲渡所得
総合課税の譲渡所得の計算は下記の通りです。
尚、取得費は外部から購入した営業権であれば経過期間に応じ5年月割均等償却後の簿価ですが、自己創設のれんの場合の取得費はゼロとなります。
営業権の取得費が不明の場合、土地、建物、有価証券のように概算で売価の5%を取得費とすることはできませんので留意が必要です(所得税基本通達38-16)。この場合の取得費はゼロとなります。
特別控除は特別控除前所得が50万円以下の場合特別控除前所得と同額とし、50万円超の場合は50万円とします。
短期とは購入後5年以内の売却の場合で、長期とは購入後5年超経過後売却の場合です。
土地や建物のように譲渡年の1月1日で判定するのではなく、通常の所有期間で判定します。
通常、長期間経過して事業譲渡するケースが多いと思われますので、営業権の売却損益は長期譲渡所得になり、所得計算上特別控除や半額計算する分、他の所得より有利になります。
そのため他の項目との入繰りがないか問題となることが多いと思われます。
■従業員を引き継がない場合
技術、ノウハウ、製造方法やサービス運営方法などを相手に開示して、屋号やブランド、固有の商品名やサービス名を引き継げば、たとえ従業員を引き継がなくても営業権の譲渡所得処理は認められると思います。
たとえそれがのれん以外のその他の無形固定資産として判定されても総合課税の譲渡所得の範疇に納まるからです。
但し、どこにでも売っている汎用の商品やサービスとともに事業を譲渡するが、従業員(人材)を引き継がない場合は通常は技術、製造、営業などのノウハウは引き継がれないと思われますので営業権の譲渡にはあたらないものとして否認される可能性はあると思われます。
■税理士業務などの一身専属権
税理士が廃業にあたり、従業員を引き継がず他の税理士や税理士法人に顧客を引き継ぎ営業権の売却損益(総合課税の長期譲渡所得)として処理したが、顧客の紹介料やあっせん収入として事業所得扱いされた裁決事例や判決事例もありますので留意が必要です。
税理士業務は一身専属性が高い業務であり、顧客とは委任契約の上に成り立ち、個人的信頼関係に基礎を置くもので他の税理士に譲渡できる性質のものではないとして否認されています。すなわち、譲渡所得の起因となる資産性はないとされたのです。
また、現在の国税庁HPには下記の通り古い個別通達が載せられており、雑所得扱いされる可能性も高いと思われますが、個人的には腑に落ちません。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/670727/01.htm
尚、税理士が死亡後、税理士でない遺族を通じて事業を他の税理士に売却する場合は雑所得になる可能性があると思われます。
■購入者側の処理も影響
営業権を購入した者が必要経費処理している場合、売却した側は営業権の譲渡とは認められない可能性が高くなると思われます。
現在では、所得税法上営業権は任意償却できなくなっているため、購入者はうっかりミスを除き営業権であれば営業権に計上して償却するはずであるからです。
購入者が必要経費処理したということは紹介手数料を支払ったと考えている証拠となる可能性が高いと思います。
住所:〒573-1111 大阪府枚方市楠葉朝日3-11-8
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営業時間:9:00~18:00 定休日:土・日・祝