貸倒損失と貸倒引当金とでは計上判定に使用する相当期間は異なります!

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貸倒損失と貸倒引当金とでは計上判定に使用する相当期間は異なります!

法人税

2018/11/26 貸倒損失と貸倒引当金とでは計上判定に使用する相当期間は異なります!

大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。

 

法律上の貸倒れのうち「取引先に書面で債務免除を行う場合の貸倒損失」と「実質基準による個別貸倒引当金」の計上判定に使う「相当期間」は異なります。

 

■取引先に書面で債務免除を行う場合の貸倒損失の場合

債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額を貸倒損失として損金算入することとされています(法人税基本通達9-6-1(4))が、その相当期間とは具体的に何年かが通達等では明示されておりません。

 

昔の文献にはその相当期間とは概ね35年?と説明されていたような記憶がありますが、どの文献だったか覚えておりません。

但し、この場合の相当期間は取引先に対し回収努力をかなり行ったが、財産状態が継続して悪いため回収不能と判断するのに必要な期間であると考えられ、債権放棄もするため下記の実質基準の個別貸倒引当金よりはより慎重にかなり長い期間で判定する必要があると思われます。

 

■実質基準の個別貸倒引当金の場合

実質基準の個別貸倒引当金の例示の一つに「債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと」があり、その場合は個別貸倒引当金を計上できることとされておりその貸倒引当金繰入限度額は(金銭債権額-担保権実行等による回収見込額)とされています(法人税施行令第96条第1項第2)

 

この場合の相当の期間とは概ね1年以上とされています。(法人税基本通達11-2-6

 

尚、もう1つの例示である実質基準の個別貸倒引当金に「災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたこと」がありますが、期間は要件とされておりません。

 

以上のように、取引先に書面で債務免除を行う場合の貸倒損失の場合の判定期間の相当期間の方が実質基準の個別貸倒引当金の場合の相当期間よりもかなり長いことに留意が必要です。

 

いずれにせよ、実際問題として、決算書や計画書を入手できない取引先に対しては債務超過であるか否か、回収可能か否かを把握することは非常に困難であり、それらを入手できても時価ベースの純資産がマイナスかどうかや回収可能性を把握することは困難なため、税務上損金算入するか否かの判断を躊躇することが多いと思います。

 

また、債権放棄の上貸倒損失を計上しても税務当局と事実認定の議論の末、否認された場合は寄付金(加算流出)扱いされてしまうため留意が必要です。

 

この点、実質基準の個別貸倒引当金の場合は債権放棄していないため、税務当局から否認(加算留保)されても、いつかは損金算入できる時期が来るため債権放棄による貸倒損失よりもリスクが低いと考えられます。

 

但し、この場合でも取引先が債務超過に至った事情や事業好転の見通しがないことを疎明する資料を残しておく必要はありますのでご留意ください。

 

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