個別貸倒引当金は計上順序があります!

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個別貸倒引当金は計上順序があります!

法人税

2018/11/12 個別貸倒引当金は計上順序があります!

大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。

 

平成23年の税制改正以後、税務上の貸倒引当金は、資本金1億円以下の中小企業等(資本金5億円以上の会社の100%子会社を除く)、銀行,保険会社等の金融機関、リース債権等を有する会社などに限定されています。

 

従って、貸金業部門やリース事業部門を持たない一般事業を営む大企業は、貸倒引当金は全額有税引当てとなってしまいましたので、貸倒損失の計上時期に注意する必要がありますが、税務上、貸倒引当金の計上についてはそれほど神経を使う必要はなくなりました。

 

■個別評価金銭債権及びその貸倒引当金繰入限度額

中小企業等については、個別評価金銭債権及び一括評価金銭債権について貸倒引当金を計上できますが、そのうち個別評価金銭債権及びその貸倒引当金繰入限度額は下記の通りです(法人税法第52条第1項、法人税法施行令第96条第1項、法人税法施行規則第25条の3)。

 

①長期棚上げ債権

⇒(金銭債権額-5年以内弁済予定金額-担保権実行等による回収見込額)を引当

イ.更生計画認可の決定

ロ.再生計画認可の決定

ハ.特別清算に係る協定の認可の決定

ニ.関係者の協議決定

㋑債権者集会の協議決定で合理的基準による負債整理

㋺金融機関等のあっせんでイに準ずるもの

 

  • ②実質基準による債権(債務超過等の事由により回収見込みがない債権)

⇒(金銭債権額-担保権実行等による回収見込額)を引当

  • イ.債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、
  • ロ.災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由
  • により、当該金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められること

 

  • ③形式基準による債権

⇒(金銭債権額-実質的に債権と認められない部分の金額-担保権実行による回収見込額-金融機関等により保証されている部分の金額)×50%を引当

.会社更生法又は金融機関等の更正手続の特例等に関する法律の規定による更正開始手続開始の申立て

.民事再生法の規定による再生手続き開始の申立て

.破産法の規定による破産手続き開始の申立て

.会社法の規定による特別清算開始の申立て

.手形交換所、電子債権記録機関による取引停止処分

 

  • ④外国政府、中央銀行又は地方公共団体に対する債権

⇒(金銭債権額-実質的に債権と認められない部分の金額-保証債務の履行等による回収見込額)×50%を引当

 

■損金算入手続

上記の個別評価金銭債権については、その事実があった年度に貸倒引当金として損金経理し、確定申告書に個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書(別表11(1))を添付し、上記の事実が生じたことを証する一定書類(法人税法施行規則第25条の4)を保存する必要があります。

 

尚、個別評価金銭債権の貸倒引当金は、存在する限り、税務上、毎期洗替えで戻入れ及び繰入れをし続けなければなりませんので留意が必要です。

 

会計上、差額補充法で貸倒引当金を計上する場合でも、適切に記載された別表11(1)を添付していれば損金経理したものとして取り扱うことになっていますので問題はありません(法人税基本通達11-1-1)が、別表4及び別表5で貸倒引当金繰入超過額を加算、前期貸倒引当金繰入超過認容額を減算表示する必要があると思われます。

 

確定申告書上課税所得に影響がなくても、別表4及び別表5で貸倒引当金繰入超過額と前期貸倒引当金繰入超過認容額を相殺表示するとそれぞれの数値が別表11(1)に一致しなくなり、洗替えにならないからです。

 

■個別引当金の計上漏れをその後の事業年度で更正の請求ができるか?

法人が事実の把握が遅れ、その事業年度に貸倒引当金を計上漏れした場合、その後の事業年度に更正の請求をしてもその事業年度に損金経理していないわけですので認められません。

 

■個別引当金の計上漏れをその後の事業年度で貸倒引当金計上すれば損金算入できるか?

法人が事実の把握が遅れ、その事業年度に貸倒引当金を計上漏れした場合、その後の事業年度においても当該債権の状況に変化がなければ損金経理により貸倒引当金を計上すれば計上年度の損金に算入できます。

 

この点、永久に損金算入できなくなる場合もある貸倒損失ほど厳しいものではありません。

 

■①長期棚上げ債権、②実質基準の債権、③形式基準の債権の計上順序

通常、不良債権は時系列的には、会計上は一般債権→貸倒懸念債権→破産更生債権等→貸倒損失と推移しますが、税務上は一括評価金銭債権→個別評価金銭債権→貸倒損失と推移します。

 

さらに、個別評価金銭債権は通常③形式基準の債権→②実質基準の債権→①長期棚上げ債権と進みます。

そして、その都度税務上の損金算入限度額は変化していくことになります。

 

従って、当期に①の長期棚上げ債権となってしまった場合、②の実質基準や③の形式基準の貸倒引当金繰入限度額の方が多いからといっていまさら②や③の基準で貸倒引当金を計上することはできません。

 

また、当期に②の実質基準で計上した場合、その後の事業年度で①の形式基準で貸倒引当金を計上することはできません。

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