一人暮らしの方が老人ホームに入所し自宅が空家となった場合に考えるべきこと

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一人暮らしの方が老人ホームに入所し自宅が空家となった場合に考えるべきこと

2016年

2016/08/30 一人暮らしの方が老人ホームに入所し自宅が空家となった場合に考えるべきこと

一人暮らしの方が老人ホームに入所し自宅が空家になり、その後一定期間経過すると自宅は居住用不動産に該当しなくなります。その後自宅を売却すると基本的に譲渡所得に対して最低でも20.315%の税金がかかります。

従って、現在別居中の子供が将来ご自宅に住む予定がある場合を除き、ご自身が特にご自宅に戻る意思も予定もない場合は居住用不動産に該当する期間内に従来からある「居住用財産を売却した場合の3000万円の特別控除の特例(措法35①)」を受けることを検討するべきだと思います。ご自身が生存中にご自宅を売却して老後資金にするつもりであれば、その売却時期により税額が異なってくるからです。

具体的には不動産売却益が3000万円以上発生する方の場合、この特例を受けることにより税金が約609万円低くなります。

さらに、売却した年の1月1日において10年超所有していた居住用財産であれば軽減税率も適用されます(措法31の3)。

本特例を受けるためには下記の要件を満たすことが必要ですのでご留意ください。

・住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに住宅(家屋及び土地)を売却すること。

・家屋を取り壊した後その敷地を売却する場合は下記の要件を満たすこと。

①家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地の譲渡契約を締結すること。

②その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の12月31日までに売却すること。

③家屋の取り壊し後敷地の譲渡契約締結日までにその敷地を貸し駐車場等の用に供しないこと。

従って、家屋を取り壊すと要件がさらに厳しくなりますので危険な空家(特定空家等)に指定されない限り基本的には家屋はそのままにして土地と共に売却するほうが良いと思われます。

また、不動産は売却するまでに相当期間かかることが通常ですので、早く空家を壊してしまうと住宅用地(固定資産税は200㎡まで6分の1、200㎡超は3分の1の課税標準、都市計画税は3分の1の課税標準)に該当しなくなるため毎年かかる固定資産税や都市計画税が高くなってしまいます。

尚、特定空家等は平成28年より上記の固定資産税の住宅用地の課税標準の特例等は適用されなくなっております(地方税法349条の3の2①)ので解体するか新耐震基準に適合するようリフォームして売却しやすくすることも検討が必要となります。

今後、政府の方針として空家を減らすため40歳未満の方が中古住宅を購入する場合、購入者に改修費を最大50万円補助する制度を創設予定(平成28年8月21日(日経新聞記事))のため、従来より中古住宅も売却しやすくなることが予想されます。