会計上の繰延資産とは何か?

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会計上の繰延資産とは何か?

会計

2018/08/17 会計上の繰延資産とは何か?

大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。

 

繰延資産とは、既に対価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用であり、費用収益対応の原則を根拠として次期以降に繰り延べられる費用のことです(企業会計原則 第三 一 D、同注解(注15)。

尚、企業会計原則では「将来の期間に影響する特定の費用」と表現しています。

 

ところで、前払費用は支出をしているがまだ役務の提供を受けていないものであるため、繰延資産は役務の提供を受けている点、前払費用とは異なります。

 

会社法上、繰延資産については、大雑把な規定になっており、具体的な計上項目、償却方法等の規定はなく(会社計算規則第5条第2項、第74条第3項第5号)、実務的には斟酌規定(会社計算規則第3条)により実務対応報告第19号(繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い)によることになっています。

また、企業会計原則より当実務対応報告が優先されることとされています。

 

会計上の繰延資産は下記の5つに限定されています。

 

  • ①株式交付費会社設立後に、企業規模拡大等のため新たに株式を発行又は自己株式を処分するために要した諸費用
  • ②社債発行費等社債募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・社債券等の印刷費、社債の登記の登録免許税その他社債発行のため直接支出した費用、また、新株予約権の発行にかかる費用を含む。
  • ③創立費会社設立のために必要な費用で、定款作成費、株式募集の広告費、発起人への報酬及び設立登記の登録免許税等からなる。
  • ④開業費会社設立後営業を開始するまでの間に開業準備のため直接支出した費用で、店舗の賃借料、広告宣伝費および従業員の給料等からなる。
  • ⑤開発費新技術又は新経営組織の採用、資源の開発,市場の開拓等のために支出した費用、生産能率の向上又は生産計画の変更等により、設備の大規模な配置換えを行った場合等の費用

 

■会計処理

会計処理、償却期間等は下記の通りです。

また、会計処理は継続適用が必要とされ、変更する場合には正当な理由が必要になります。

 

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繰延資産は将来キャッシュフローを獲得しうるものではないため原則として支出時に費用処理、例外として費用収益対応の原則から繰延資産計上が認められるが、その効果の及ぶ期間内に定額法で償却(月割)をしなければならないこととされています。

また、支出時費用処理する場合の表示場所は原則として開発費を除き営業外費用とされています。

 

繰延資産計上する場合でも上記の通りの「・・・費」の勘定科目を使うため、初めて会計を習う人にとっては少し違和感を感じるかもしれません。償却費は「・・・費償却」と表示します。

 

■株式交付費

株式交付費を繰延資産計上できる場合は企業規模の拡大のための資金調達等の場合のみに限定されていることに留意が必要です。

従って、株式分割や株式無償割当て等に係る費用は繰延資産計上できず、支出時費用処理が強制されますが、この場合は販売費および一般管理費処理も認められています。

 

また、株式交付費には自己株式の処分に係る費用も含まれていることに留意が必要です。

 

尚、IFRSでは、株式交付費は資本から直接控除することとされていますが、株主との間の資本取引によって発生するものではないこと、財務費用としての性格が強い等の理由から、従来通りの会計処理(支出時費用処理又は繰延資産)とされています。但し、今後将来IFRSとのコンバージェンスの観点から会計処理の見直しが行われるかもしれませんので留意が必要です。

 

■創立費

会社法では、創立費を資本金又は資本準備金から減額することが可能とされています(会社計算規則4313号)が、株主との間の資本取引によって発生するものでないため、従来通りの会計処理(支出時費用処理又は繰延資産)とされています。

 

■開発費

開発費は「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費とは異なります。

研究開発費は発生時に費用処理しなければならないので留意が必要です。

 

ちなみにIFRSでは、開発とは、商業生産又は使用の開始前に、研究により発見した又はその他の知識を、新しい又は相当に改良された材料、装置、製品、工程、システム又はサービスの製作のための計画やデザインに応用することとされており、6つの条件(ここでは内容は省略します)をすべて立証できる場合には「無形資産」に計上しなければならないとされています。

従って、IFRSを採用すると研究開発費を研究費と開発費に区分し、さらに開発費のうち一定のものは資産計上が強制されることがあります。

 

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