法人が剰余金の配当を行う場合、その原資の種類により処理は異なります!

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法人が剰余金の配当を行う場合、その原資の種類により処理は異なります!

2019年

2019/06/28 法人が剰余金の配当を行う場合、その原資の種類により処理は異なります!

大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。

 

会社が剰余金の配当を行う場合は通常繰越利益剰余金から配当を行うことが多いですが、任意積立金やその他資本剰余金を取り崩して行うことも可能です。

 

■剰余金の配当を行った法人の会計処理

法人が剰余金の配当を行う場合、その原資をその他利益剰余金とするか、その他資本剰余金とするかにより会計処理は異なります。

会社法上、剰余金とはその他利益剰余金及びその他資本剰余金のことであり、剰余金の配当とは、株主に対する配当だけではなく、資本金や準備金の減少に伴う払戻しも含む概念です。

また、債権者保護の観点から、剰余金の配当を行うごとに資本金の4分の1に達するまで準備金を積み立てることを要求されます(会社法第4454項)。

尚、既に準備金が資本金の4分の1まで達している場合は準備金の積立ては不要です。

うっかり、準備金を過剰に積立てしないように気を付けましょう。

 

仕訳は下記の通りです。

  • 1.その他利益剰余金を原資とする場合
    • ①株主総会でその他利益剰余金を原資に配当を行う決議をした時

繰越利益剰余金XX / 未払配当金XX

繰越利益剰余金XX / 利益準備金XX

 

  • ②配当金支払時

上場会社は配当金支払時に所得税及び復興特別所得税(15.315%)、住民税(5%)を源泉徴収する必要があり、非上場会社は所得税及び復興特別所得税(20.42%)を源泉徴収する必要があります。

 

未払配当金XX  現金預金        XX

                         預り金(源泉所得税等)XX

 

  • 2.その他資本剰余金を原資とする場合
    • ①株主総会でその他資本剰余金を原資に配当を行う決議をした時

その他資本剰余金XX / 未払配当金XX

その他資本剰余金XX / 資本準備金XX

 

  • ②配当金支払時

税務上は通常みなし配当が生じ、その部分については上記1の場合と同様所得税等を源泉徴収する必要がありますので留意が必要です。

 

未払配当金XX  現金預金        XX

                         預り金(源泉所得税等)XX

 

それでは、税務上はどのように処理することになるでしょうか。

 

■剰余金の配当を行った法人の税務処理

その他利益剰余金を原資に配当する場合は、会計と同じですが、その他資本剰余金を原資に配当する場合は異なります。

 

  • 1.その他利益剰余金を原資とする場合
    • ①株主総会でその他利益剰余金を原資に配当を行う決議をした時

利益積立金額XX / 未払配当金XX

利益積立金額XX / 利益準備金XX

 

従って、この場合、申告調整は不要です。

 

  • ②配当金支払時

会計処理と同様ですので省略します。

 

  • 2.その他資本剰余金を原資とする場合
    • ①株主総会でその他資本剰余金を原資に配当を行う決議をした時

税務上は会計とは異なりその他資本剰余金を原資に配当しても、プロラタ計算(直前の資本等の金額と利益積立金額で按分計算)を要求   され、配当のうち資本等の金額を超える部分はみなし配当が生じ、その部分については利益積立金からの配当となります。

 

資本金等の額  XX   未払配当金XX

利益積立金額  XX

その他資本剰余金XX / 資本準備金XX

 

従って、たとえ資本金を減少させてその他資本剰余金に振替後すぐに株主に払い戻しても通常、税務上は全額がその他資本剰余金の減少   とはならず一部みなし配当となり、別表4(みなし配当:社外流出)及び別表5(1)(資本金等の額と利益積立金額)で調整が必要となり   ますので留意が必要です。

 

  • ②配当金支払時

会計処理と同様ですので省略します。

 

■その他資本剰余金を原資に配当した場合の具体的事例

 

下記の法人が資本金を10,100,000円減資し株主に払い戻す決議をした場合(その他資本剰余金を原資に配当決議した場合)の会計処理、税務処理は下記の通りとなります。

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<会計上の仕訳>

資本金 10,100,000 /その他資本剰余金 10,100,000

その他資本剰余金10,100,000 / 未払配当金10,100,000

 

<税務上の仕訳>

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資本金等の額 1,080,000  未払配当金10,100,000

利益積立金額 9,020,000

 

これにより会計上の資本金+資本準備金は9,900,000円になりますが、税務上の資本金等の額は18,920,000円となります。

従って、この事例では税務上も資本金は9,900,000円となり事業税の軽減税率適用の可能性は高まりますが、平成27年度地方税改正後も住民税の均等割を資本金等の額を基準にしている市町村や都道府県では減資後も均等割は減少しないことになります。

やはり、有償減資(古い言い方ですが)は、あまり留保利益が積み上がらないうちに行わないと効果は小さいですね。

 

呼びかけている男性のイラスト

 

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