平成27年10月より消費税のリバースチャージ方式が始まっております。

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平成27年10月より消費税のリバースチャージ方式が始まっております。

2016年

2016/11/30 平成27年10月より消費税のリバースチャージ方式が始まっております。

 皆様ご存知の通り平成27年10月から国境を越えた電気通信利用役務の提供に対する消費税の課税の見直しが行われ、国内事業者が国外事業者に広告等の配信等をしてもらった場合は、当該役務の提供を受けた国内事業者が消費税の申告納税義務を負うこととなっております。

 消費税は通常、役務の提供者(売上計上者側)が申告納税しますが、その逆(リバース)に役務の提供を受ける者(仕入計上者側)が申告納税義務を負うことからリバースチャージ方式と呼ばれています。従来の輸入取引の場合の申告納税の取扱いとよく似ていますが、消費税の支払は、輸入の場合は通関時、リバースチャージ方式は確定申告時となるところが相違点です。

 また、平成28年4月より国内事業者が国外事業者から芸能・スポーツ等の役務提供を受けた場合も同様の扱いとなりました。

 さらに、平成29年1月より、国内事業者の国外支店、国外事業者の国内支店の取扱いが改正されました。

 尚、国外事業者から電気通信利用役務や芸能・スポーツ等の役務提供を受けない国内事業者、免税事業者、簡易課税選択事業者、一般課税のうち課税売上割合が95%以上の事業者はリバースチャージ方式を適用されませんので、以下は読む必要はありません。

 但し、国内事業者が登録国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合は仕入税額控除ができるようになったことは最低限知っておく必要はあるかと思います。

 具体的な内容は以下の通りです。

 

■平成27年10月以降

 国内事業者が国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、国内事業者はリバースチャージ方式により申告納税義務を負います。

 また、国内事業者が国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、国外事業者が申告納税義務を負いますが、国内事業者は経過措置により、当分の間、当該役務の提供に係る課税仕入れについては仕入税額控除の制限(不可)を受けることとされました。

 但し、国外事業者が登録国外事業者である場合は、仕入税額控除を受けることができるとされております。具体的な登録国外事業者は下記をご参照下さい。

 https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/cross/touroku.pdf

 

 以上の内容をまとめると以下の通りとなります。

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※1.課税売上割合が95%未満の一般課税適用者に限る。

 

 各定義は以下の通りです。詳細は「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A(国税庁消費税室)」をご覧ください。

 https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-QA.pdf

 

1.電気通信利用役務の提供(Q&A問2−1,2)

   電子書籍、音楽、広告の配信など電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供。

   例えば、アマゾンやグーグルなどの電子商取引、facebookなどへの広告等

 

2.内外判定(国内事業者、国外事業者)

   内外判定は、平成27年9月以前は電気通信利用役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で行いましたが、平成27年10月以後は電気通信利用役務の提供を受ける者の住所等で行うこととなりました。

   そのため、従来は国外事業者が国内事業者に電気通信利用役務の提供をしても不課税でしたが、改正後は課税され、逆に国内事業者が国外事業者に電気通信利用役務の提供をした場合、従来は課税(一定の場合は輸出免税)されていましたが、改正後は不課税となりました。

   これにより電気通信利用役務の提供を行う国内事業者の国際競争力が増しました。

   また、内外判定は電気通信利用役務の提供を受ける者の住所等で行うこととなるため、国内事業者の国外支店が国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合でも国内事業者は国内取引としてリバースチャージ方式の適用を受け、国外事業者の国内支店が他の国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合でも国外事業者は国外取引として不課税となることに留意が必要です。

 

3.事業者向け電気通信利用役務とそれ以外の電気通信利用役務(消費者向け電気通信利用役務)

(Q&A問3−1,2、問4)事業者向け電気通信利用役務

役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるもの

役務の性質から事業者向け電気通信利用役務に該当するものの例

インターネットを介した広告の配信、インターネット上でゲームやソフトウエアの販売場所を提供するサービス等

取引条件等から事業者向け電気通信利用役務に該当するものの例

クラウドサービス等の電気通信利用役務の提供のうち、取引当事者間において提供する役務の内容を個別に交渉し、取引当事者間固有の契約を結ぶもので、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの。

    但し、事業者向けであることをwebサイトに掲載していたとしても、消費者をはじめとする事業者以外の者からの申込を事実上制限できないものは消費者向け電気通信利用役務に該当します。

  消費者向け電気通信利用役務

    電気通信利用役務の提供のうち、事業者向け電気通信利用役務に該当しないものであり、具体的には、対価を得て行われるもので消費者も含め広く提供される以下のもの

   ・インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウェア(ゲーム等の様々なアプリケーションを含む)の配信

   ・顧客にクラウド上のソフトウェアやデータベースを利用させるサービス

   ・インターネット上の顧客の電子データの保存を行う場所を提供するサービス

   ・インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス

 

4.課税部分

   基本的には特定課税仕入額(国内事業者が国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた金額)の非課税売上割合部分について消費税を支払うことになります。

   特定課税仕入れに係る消費税額×(1−課税売上割合)

 

5.申告書記載方法

   特定課税仕入れがある場合は消費税申告書に併せて別表及び付表2の記載が必要となります。

   申告書の参考事項の欄に「特定課税仕入れに係る別表の提出有」欄に○を行い、別表で通常の課税売上高である

「課税資産の譲渡等の対価の額」と「特定課税仕入れに係る支払対価の額」に記載し、それらの合計額として課税標準額を算定して申告書の「課税標準額」に転記します。

   付表2の「特定課税仕入れに係る支払対価の額」及び?「特定課税仕入れに係る消費税額」に記載し、後は個別対応方式、一括比例方式に従い従来と同様に計算を行います。

   従って、特定課税仕入れについては「課税標準額」欄と「特定課税仕入れに係る支払対価の額」欄の両方に同額が含まれることになります。

   尚、国税局HPに個別対応方式で特定課税仕入れが共通対応に該当する事例の記載が示されていますのでご参照下さい。

   ・法人用消費税及び地方消費税の申告書(一般用)の書き方(平成28年4月作成)のP11〜P15

 https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/kaisei/yoshiki/pdf/kakikata-ippan28.pdf

 

   ・一般用平成28年分消費税及び地方消費税の確定申告の手引き個人事業者用のP21〜P23

 https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28_shouhi_kakushin_kojin_ippan.pdf

 

6.国内事業者のリバースチャージ方式の会計処理

  事例.国内事業者が国外事業者のwebを通して広告を配信し100万円を支払い、課税売上割合が90%であった場合

  役務提供受時

    広告宣伝費 1,000,000/未払金 1,000,000

      仮払消費税等  80,000/仮受消費税等  80,000

    仮受消費税等はリバースチャージ方式の納税義務者として、仮払消費税等は特定課税仕入れとして仕入税額控除の対象となるため両建て計上される。

  ③決算時

    仮受消費税等  80,000/仮払消費税等80,000

    租税公課     8,000/未払消費税等 8,000

 

■平成28年4月以後

 国内事業者が国外事業者から国内において映画・演劇俳優、音楽家、その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする特定役務の提供を受ける場合、先述の事業者向け電気通信利用役務の提供と同様、リバースチャージ方式の適用を受けるようになりました。

 従って、国内の芸能法人だけでなく、一般事業者でも国外事業者から特定役務の提供を受ける場合はリバースチャージ方式の適用を受けることになります。

 尚、「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」を併せて「特定資産の譲渡等」といいます。

 

■平成29年1月以後

 先述の「■平成27年10月以後」の「2.内外判定(国内事業者、国外事業者)」のまた以降の部分で述べた内容が平成29年1月以降は全く逆の取扱いになります。

 すなわち、国内事業者の国外支店が国外事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供は平成28年12月まではリバースチャージ方式の対象であったが、平成29年1月以降は不課税となります。

 他方、国外事業者の日本支店が他の国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けても平成28年12月までは不課税であったが、平成29年1月以降はリバースチャージ方式の対象となります。