税法固有の繰延資産の償却年数とは?

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税法固有の繰延資産の償却年数とは?

法人税

2018/08/22 税法固有の繰延資産の償却年数とは?

大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。

 

税法固有の繰延資産とは、所有権はないが他人が所有する資産を使用するために支出する費用等がほとんどですが、所有権を持つ場合に比べて少ない償却年数で償却できる規定となっています。

 

具体的には下記の表の通り、専用に使用できる場合は法定耐用年数の7/10、一般公衆も利用できる場合は法定耐用年数の4/10とされており、償却期間に1年未満の端数がある場合は切捨てされます(法人税基本通達8-2-3)。

なお、基本的には返還、売却できないことを前提としていると思われるため、売却できるものは償却できないと思われますが、借家権として転売できるものも償却可能であることに留意が必要です。

 

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尚、以下の点について留意が必要です。

 

■貸室等に利用される部分の会館建設負担金は繰延資産でよいか?

会館建設のための負担金であっても、貸室など協会等の本来の用以外の用に供されるときは、その部分に係る負担金は協会等に対する寄付金になります(法人税基本通達8-1-4)。

 

■国等に土地を寄付した場合の処理は難しい

下記の通り、寄付金、繰延資産、土地のいずれかになります。

1.国又は地方公共団体に寄付された資産が、その寄付をした法人の便益に供される場合は、国等に対する寄付金ではなく、繰延資産計上が必要となります。

その寄付をした法人の便益に供されない場合は寄付金になります。

2.法人が道路用地を現状のまま、又は道路として舗装の上、国等に提供した場合は、その土地代および舗装費は15年をベースに計算しますので、公共的施設の負担金の償却年数は負担者専用であれば10年、一般公衆利用可であれば6年となります(法人税基本通達8-2-31)。

3.専ら所有土地の利用のために設置されている私道を地方公共団体に寄付した場合は、寄付したことによる損失はないものとされています。私道の帳簿価額をその土地の帳簿価額に振り替えることになります(法人税基本通達7-3115)。
なお、専ら所有土地の利用のために設置されている私道ではない場合は繰延資産となります。

 

■公共的施設の負担金等を分割払いする場合の処理

1.短期分割払い(3年以内)の場合

公共的施設の負担金を概ね3年以内の分割払い(短期分割払)の場合は未払金計上の上、負担額全額を基礎に償却できます(法人税基本通達8-3-3)。

2.長期分割払い(3年超)の場合

①繰延資産計上する場合

分割払期間が概ね3年超(長期期分割払)の場合は、原則として分割支出額を順次繰延資産の額に加えてその累計額を償却することになります。

 

具体的には下記のような償却計算となりますが、少し留意が必要です。

例えば、240万円の負担金(6年償却)を5年分割払いで毎期首に支払う場合は以下のアの計算で行うことが多いと思います。

 

ア.支出の都度、繰延資産計上してそれぞれの金額を別個に償却する方法

 

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しかしながら、上記の分割支出額を順次繰延資産の額に加えてその累計額を償却する方法とは下記のイの方法です。

 

イ.分割支出額を順次繰延資産の額に加えてその累計額を償却する方法

 

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このケースでは8年目で全額償却は終了しますが、アの方法では10年かかります。アの方法で計算しても税務上問題にはならないと思いますが、やはりイの方法の方が7年目以降償却費が多くなるため有利となります。

 

②支出の都度、損金処理できる場合

以下の要件を満たす場合は、支出の都度、支出額を全額損金算入できます(法人税基本通達8-3-4)。

(1)その負担金額が、その繰延資産の償却期間に相当する期間以上の期間にわたり分割払いされること。

(2)その分割払金額が概ね均等額であること。

(3)その分割払が施設の工事の着工後に開始されること。

 

■賃借期間が2年の借家権利金の償却年数は常に2年でよいか?

借家契約で賃借期間が2年となっていても、更新時に再度権利金等を支払う必要がない場合は、5年償却となります。更新時に再度権利金等を支払う場合は2年となります。

 

■未着工の会館建設負担金を支払った場合は支出時から償却してもよいか?

同業者団体の会館建設金を支出したが、まだ工事が着工されていない場合、償却開始年月は会館建設に着手した年月からですので、支出した年月から償却できません(法人税基本通達8-3-5)。

 

■繰延資産の支出時損金処理が認められるのはいくらからか?

20万円未満の繰延資産は支出時損金処理ができます。この点、有形固定資産や無形固定資産が10万円未満となっていますので留意が必要です。

また、長期前払費用(例えば火災保険料を2年分前払する場合)は、上記のような少額特例はありませんので留意が必要です。但し、短期前払費用(1年以内)の特例はあります。

 

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