税法上の繰延資産と会計上の繰延資産の相違点

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税法上の繰延資産と会計上の繰延資産の相違点

法人税

2018/08/20 税法上の繰延資産と会計上の繰延資産の相違点

大阪で税理士事務所・公認会計士事務所として開業している公認会計士大里眞司事務所です。

 

繰延資産とは、既に対価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用であり、費用収益対応の原則を根拠として次期以降に繰り延べられる費用のことです(企業会計原則 第三 一 D、同注解(注15)。

尚、企業会計原則では「将来の期間に影響する特定の費用」と表現しています。

 

会社法上、繰延資産については、簡単な規定になっており、具体的な計上項目、償却方法等の規定はなく(会社計算規則第5条第2項、第74条第3項第5号)、実務的には斟酌規定(会社計算規則第3条)により実務対応報告第19号(繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い)によることになっています。

 

■会計上の繰延資産

会計上の繰延資産は下記の5つに限定されています。

 

  • ①株式交付費
  • ②社債発行費等
  • ③創立費
  • ④開業費
  • ⑤開発費

 

繰延資産は原則として支出時に費用処理、例外として繰延資産計上が認められるが、その効果の及ぶ期間内に定額法で償却(月割)をしなければならないこととされています。

また、費用処理する場合の表示場所は原則として開発費を除き営業外費用とされています。

 

■税法上の繰延資産

税法上の繰延資産には上記の会計上の繰延資産だけでなく下記の税法固有の繰延資産もあります(法人税法施行令第14条)。そのため税法上の繰延資産は会計上の繰延資産よりも範囲が広いです。

 

税法固有の繰延資産(次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの)

  • ①自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
  • ②資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
  • ③役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
  • ④製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
  • ⑤①から④までに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

 

■税法固有の繰延資産の勘定科目

税法固有の繰延資産を会計上資産計上する場合でも、会計上の繰延資産は先述の5つに限定されているため繰延資産として表示することは許されません。

 

それでは税法固有の繰延資産はどの勘定科目を使えばよろしいでしょうか。

実務上は長期前払費用(投資その他の資産)を使うことが多いです。

 

本来、前払費用は支出をしているがまだ役務の提供を受けていないものであるため、繰延資産が既に役務の提供を受けている点、繰延資産とは異なります。

 

従って、この勘定科目も適当ではないかもしれませんが、他に適当な勘定科目も見当たらないため使用されているものと思われます。

また、償却費は長期前払費用償却が使用されていることが多いと思います。

 

■法人税法上の繰延資産の償却

税法上、会計上の5つの繰延資産は任意償却(定額法でなくてもよい)とされています。

 

税法固有の繰延資産は法人税基本通達に規定する償却期間で均等償却(償却限度額)し、それ以上費用処理した場合は申告加算しなければなりません。

 

なお、支出額20万円未満の場合は一時の損金とすることが可能です。この点、有形固定資産や無形固定資産の場合は一時の損金とできるのは10万円未満(中小企業は30万円可能)ですので留意が必要です。

 

みなし損金処理の認められている繰延資産(法人税法施行令第66条の2)以外は帳簿上損金経理しなければ損金処理できなく、確定申告書に明細書の添付(別表16(6))が必要とされています(法人税法施行令第67条)。従って、申告減算はできません。

 

なお、監査を受けている会社は、繰延資産を支出時費用処理する場合が多いと思われますが、繰延資産計上する場合、重要性がない場合を除き任意償却では問題がありますので、やはり会社計算規則通り定額法で処理し、毎期継続適用する必要があります。

 

■会計上の繰延資産と税法上の繰延資産

会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の会計処理、税務処理を表でまとめると下記の通りとなります。

 

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